介護浴槽の選び方・浴槽のタイプや入浴の方法もご紹介

高齢者や障害を持つ人の介護において、入浴はたいへんな作業です。これは介護をする人にとっても、される人にとっても同様で、少しでも負担を選らしたいものです。入浴の負担を減らすには、適切な介護浴槽を選ぶことが大切です。また、関連設備や入浴の方法によっても、大いに負担を減らすことができます。

介護浴槽を選ぶ方法

少子高齢化が進む日本社会では、高齢者や障害者の生活を支援したり、世話をしたりする介護の重要性が増しています。日本では明治の時代にすでに、介護という言葉が使われていましたが、現在とは異なる概念です。「介護」という言葉が頻繁に使われ始めたのは1970年代から1980年代のことです。日本では古くから、「長男が親の面倒をみる」という考え方がありましたが、現在の少子高齢化社会には、もはや当てはまらなくなっています。核家族化と寿命の延びは、老人が老人を介護する時代を作り上げました。もちろん、現在は社会福祉関連のサービスも充実してきましたが、まだまだ、個々の高齢者や障害者に適したサービスが提供されているとは言えません。

ただ、高齢化が進む日本では、介護関連ビジネスが盛んです。介護関連サービスはもちろんのことですが、幅広いニーズに応える介護関連用品ビジネスも盛んです。中でも介護する人とされる人、どちらにとっても負担の大きい「入浴」関連の製品は、多くのメーカーから販売されています。この記事では、使い勝手が良く、介護の流れを邪魔することのない介護浴槽の選び方や関連設備の選び方をご紹介します。また、介護浴槽のタイプ別や介護浴槽を使った入浴の方法をご紹介します。

利用する人に合った介護浴槽を選ぶ

介護浴槽は、利用する人に合ったものを選ばなければなりません。介護浴槽には、大きく分けて3つのタイプがありますので、利用する方がどのような状態なのかを考え、適切なタイプを選択しましょう。

座位入浴タイプ

車椅子に座ったまま入浴するタイプの介護浴槽です。利用者にとっては、自然な姿勢で入浴できること、そして視野が広いというメリットがあります。

仰臥位(ぎょうがい)入浴タイプ

仰臥位入浴タイプは、仰向けに寝たまま入浴ができる、主に重度の障害を持った方や寝たきりの方向けの介護浴槽です。ストレッチャーからスライド、そしてそのまま入浴ができるものもあります。

ADL入浴タイプ

ADLは「Activities of Daily Living」の頭文字を取ったもので、日本語では「日常生活動作」と呼ばれています。ADL入浴タイプは、より実生活に近いタイプの介護浴槽で、リハビリを兼ねた使い方ができます。浴槽の縁をまたぐなどの動きができる利用者に適していて、リフトなどのサポート装置を付けて使うこともできます。

長く使える介護浴槽がおすすめ

介護浴槽に限ったことではありませんが、将来を見据えてものを選ぶことは大切です。介護浴槽の場合、利用者の将来の姿を考慮して選ぶといいでしょう。現在、座位入浴ができていたとしても、数年後には仰臥位入浴タイプでしか入浴できない、ということも考えられます。

介護にとれるスペースを考えた介護浴槽選び

介護浴槽には、大型のものと小型のものがありますので、スペースに合わせてセレクトします。小型の介護浴槽は、設置スペースに余裕がない場合の選択肢です。ただ、浴槽内も必然的に小さくなるので、入浴姿勢に制限がある方や、体が大きな方には向きません。大型の介護浴槽は、比較的スペースに余裕がある場合にセレクトするといいでしょう。浴槽内にも余裕があるので、ゆったりと浸かることができます。

関連設備や介護の流れを考慮した介護浴槽選び

入浴は、健常者にとっては「なんてことのない」ことですが、介護をする人、される人にとっては、そんなにかんたんなことではありません。介護浴槽を設置できたとしても、浴室への導線が保たれていなければ、負担が軽減されることはないでしょう。そのため、介護浴槽を導入するのであれば、浴室だけではなく、浴室に移動するまでの道のりに無理がないか検討を重ねましょう。普段、生活している部屋から浴室、そしてその逆の道をたどるわけですが、スペースが限られる場合、行きと帰りで同じ動作(たとえば方向転換)ができない場合があります。

介護浴槽のタイプ

介護浴槽のタイプについてはすでにご紹介しましたが、ここからは、もう少し詳しくご紹介します。

座ったまま入れる座位入浴

専用の車椅子に乗り、座ったまま入浴ができる製品です。浴槽に車椅子をそのままはめ込むような形で連結し、手軽に入浴することができます。デイケアや老人保健施設などでよく使われているタイプの介護浴槽です。

寝たまま入れる仰臥位入浴

仰臥位入浴ができる介護浴槽は、各メーカーから発売されています。専用のストレッチャーからそのまま浴槽内に設置された昇降装置上にスライドし、入浴するもの。また、利用者を担架ごと昇降装置に載せ、そのまま下降させて入浴するもの。また、シャワータイプの製品もあります。多くの病院に、この仰臥位入浴ができる介護浴槽が設置されています。

リフト付き浴槽

既存の浴槽、もしくは専用の浴槽を利用して、リフトで入浴するのがリフト付き浴槽です。基本的にコンパクトな設計なのでサービス付きの高齢者住宅などに設置できるものもあります。

個浴型介護浴槽

個浴型介護浴槽は、在宅入浴に近いため、自宅復帰を目指しリハビリ中の方に最適です。自立を促しながらも、握りやすさや姿勢サポートなどが考えられていて、利用者に負担をかけないよう設計されている製品を選びましょう。

介護浴槽の入浴方法

介護浴槽のタイプについてご紹介してきましたが、続いては入浴の方法をご紹介しましょう。

介護浴槽には、主に3タイプの入浴方式があります。まずは貯湯式。この方式は、一般家庭での入浴に近く、お湯を浴槽に貯めて、殺菌や足し湯をして使用します。消費する湯量が少ないので水道代の節約につながります。

続いては新湯式。この方式では、利用者が変わるごとにお湯を入れ替えます。そのため、衛生面において優れているのですが、反面、使用するお湯が多いことがデメリットです。ただ、お湯を多く消費してしまうことから、ボディも小さく作られていることが多く、設置スペースに余裕がない小さな施設でも導入しやすいという利点があります。

そして最後にご紹介するのがシャワー式です。この方式では貯湯式、新湯式のようにお湯を貯める必要がありません。ドームのような形状の浴槽内でシャワーを浴び、体を洗えるような作りになっています。

介護浴槽の選び方

2025年には、団塊の世代が75歳を迎え、後期高齢者となります。日本の人口の高齢化はますます進み、高齢者本人だけでなく、家族、医療、そして社会全体が、介護の在り方について、より深く考えなければならなくなりました。現在、元気に暮らしている高齢者の方も、数年後、今と同じ暮らしができているとは限りません。高齢者介護は、将来の姿も考えながら行わなければならないのです。

今後、高齢化がさらに進むにつれ、また、社会環境の変化が進むにつれ、介護する側にも変化が求められる可能性があります。

介護浴槽も、利用者の現在の状況、そして将来のことを考えて選ぶ必要があります。実際、介護浴槽はほとんどの場合、病院や老人保健施設などに導入されますが、施設の将来の姿を考慮して選ぶことも重要です。